pool.day:カメラロールのスクショを検索前の意図に変える iPhone アプリ
2026-06-01

スマホのカメラロールを開くと、いつ撮ったか忘れたスクショが並んでいる。気になったレシピ、あとで見ようと思った商品、旅行先で見つけたホテル。撮った瞬間は意味があったのに、数十枚も貯まると、もう探す気にもならない。多くの人が毎日くり返しているこの行動を、保存と検索の入口にしようとしているのが pool.day という iPhone アプリだ。
運営は Random Access Memories Co.。スクショを撮ると内容を読み取って、レシピや商品やレストランといったコレクションに自動で分けてくれる。旅行先のホテルをスクショすれば、店名や場所を読み取り、元の投稿リンクまで探す。友達と同じコレクションを共有して、一緒に行き先を貯めることもできる。ここまでなら、よくあるスクショ整理アプリに見える。
ところが公式が出している Research を読むと、狙いはもっと先にある。pool.day が取りに行くのは、検索語になる前の意図と嗜好だ。「何かをしたい気配」と、言語化される前の好みの型。買った・予約した・検索したという記録の手前にあるこの 2 つを、カメラロールから読もうとしている。アプリの表向きは整理ツールだが、Research の語り口は投資家向けのメモに近い。
この記事は、表の整理ツールと裏の仮説のギャップを軸に、pool.day が何を資産として狙っているのかを読み解いていく。なお検索で頻出する poolday.ai は別会社で、$8.7M の調達記録はそちらに属する。本記事の対象は pool.day(Random Access Memories Co.)のスクショアプリだ。混同しやすいので 6 章で整理する。
1. 新しい保存習慣を作らないのが入口
先に pool.day の基本情報をまとめておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営 | Random Access Memories Co.(創業 2025 年) |
| 創業者 | Maxime Junique と Piet Terheyden。side project として開始 |
| 規模 | LinkedIn 表記で 2〜10 名 |
| 資金調達 | 公開ベースでは確認不可。採用ページに「投資家の支援」の言及のみ |
| プロダクト | iPhone アプリ(pool.day)。スクショを自動分類・コレクション化・共有 |
| App Store | 評価 3.1(19 件)、版 1.1.2、直近更新 2026 年 4 月 24 日(2026/05/25 確認) |
| 招待設計 | 段階開放の途中。入口は招待制 |
多くの保存アプリは、ブックマークする、メモに貼る、タグを付ける、といった新しい手間をユーザーに求める。pool.day はそこを避け、すでに毎日やっている「スクショを撮る」行動の上に乗せた。App Store の説明でも、スクショはレシピやポッドキャスト、商品や場所を覚えるために撮られるが、カメラロールの中で次第に埋もれる、と前提を置いている。pool.day はそれを構造化された情報に変えると説明する。
ユーザーから見える機能は、スクショをテーマ別のコレクションに整理し、内容を自動でカテゴリ分けし、元になったリンクを探し、友達とコレクションを共有する、の 4 つだ。保存にかかる心理的コストは、ブックマークやメモへの貼り付けより軽い。OS の操作をそのまま保存の入口にしているからだ。
だからこそ、渡る情報量は通常のブックマークより多くなる。画像だけでなく、画面上のテキスト、近くの写真、位置情報までが一度に流れ込む。この差が、後の章で見る「意図と嗜好を読む」という仮説の土台になる。
現状はまだ段階開放の途中だ。2026 年 5 月 25 日時点で App Store 評価は 19 件の 3.1、版は 1.1.2、更新は 2026 年 4 月 24 日。創業は 2025 年で、運営の Random Access Memories Co. は LinkedIn 表記で 2〜10 名の規模。招待制の入口設計を反復している段階なので、評価の母数はまだ小さい。
参考: pool.day 公式サイト / pool.day の App Store ページ
2. 狙うのは買う前・検索する前のシグナル
その流れ込むデータで pool.day が何を読もうとしているのか。Research は、スクショを「行動後のデータ」と対比して説明している。行動後のデータとは、買った、予約した、検索した、支払った、という記録だ。検索広告、購買履歴、カード明細がここに並ぶ。広告ビジネスの多くは、この記録を奪い合ってきた。
pool.day が取りに行くのは、その手前のシグナルだ。まだ買っていないし、検索語も決まっていない。それでも気になるものをスクショしている。たとえば旅行先のホテルや地図、動画の一場面を保存し、数日後に友達と話題に出し、数週間後に予約する。この間にある私的な検討履歴は、検索ログにも決済データにも残らない。だから、ここを押さえれば誰も持っていないデータになる、という賭けだ。
pool.day はここを「camera roll AI」と呼んでいる。心拍や睡眠といった身体データを誰よりも早く押さえた WHOOP と同じ位置取りで、スクショを最初の入力データとして扱おうとしている。

参考: pool.day Research: カメラロール論 / pool.day Research: WHOOP, Spotify, Plaid との比較
3. 嗜好はアプリをまたいで時間をかけて貯まる
意図と並んで pool.day が使うもう 1 つのキーワードが嗜好(taste)だ。公式は、本人が「ミニマルが好き」と言語化した自己申告(preference)と区別している。嗜好はその前にある視覚的な引き寄せられ方で、何に目が止まり、何を保存し、何度も見返すか、という行動からしか見えてこない。
公式 Research は、スクショ行動が一様でないことを数字で示している。何かと比べるために見るセッションは平均 3.1 分で短いが、嗜好を眺めるためのセッションは平均 8.2 分と倍以上に伸びる。さらに、Instagram から撮ったスクショの 90% 超は買い物目的ではなく、投稿やアカウントを集めて眺める使われ方に近いという。買い物目的に絞っても時間軸は長く、最初の保存から 20 枚目まで平均 548 日、同じ商品を 29 回も保存したユーザーがいた、という数字も出てくる。
これらは pool.day 自社データに基づく主張で、第三者が監査した市場統計ではない。それでも、何を資産と見ているかははっきりする。1 枚のスクショではなく、何百日もかけてアプリをまたいで貯まる嗜好のグラフのほうだ。

4. 競合は写真アプリとブックマークアプリにまたがる
この嗜好のグラフを狙う場所は、すでに混み合っている。pool.day の競合は 1 つのカテゴリに収まらず、写真アプリとブックマークアプリの両方にまたがる。
まず Apple Photos と Google Photos がある。写真検索、文字認識、人物認識、場所認識を OS に近い場所で持っている。OS 標準が同じ方向へ進むと、pool.day の基本機能との差は縮む。だから最も大きいプラットフォームリスクはここにある。
Pinterest は視覚的な発見を持つが、対象は Pinterest 内のピンが中心だ。pool.day は TikTok、Instagram、X、Safari、Maps、買い物サイトから落ちてきたスクショを扱い、それらを 1 か所でまとめて見せようとする点が違う。mymind や Fabric ScreenshotAI は AI ブックマークに近く、スクショやリンクを検索できる。pool.day との差分は、友達との共有、コレクションという単位、元リンク復元、嗜好を軸にした語り口にある。Cosmos も視覚的なインスピレーション収集の場として近く、デザイナーが参考画像を集める用途では競合する。
スクショ整理、AI 検索、視覚的な収集は、どれも先行プレイヤーが多い。pool.day が選んでいる差分は、機能そのものより語り口にある。次の章で見るように、その語り口を支える守りが、同時にリスクにもなる。
参考: mymind / Fabric ScreenshotAI / Cosmos
5. 守りとリスクが同じ場所にある
pool.day の守りは、UI ではなく私的なカメラロールの側にある。競合が再現しにくいのは、スクショがアプリをまたいで集まるほどユーザーの意図と嗜好の履歴が厚くなる、という積み上がりだ。後から入ってきた競合は、この何百日分もの履歴を持っていない。
ところが、その守りと同じ場所がリスクにもなる。Apple Photos が元リンク推定や意味検索を深め、Google Photos が Android 上でスクショ支援を作り、iOS が選択したスクショのアルバムを賢く扱う。こうした流れが進むと、pool.day の基本機能は OS 側に近づき、差が見えにくくなる。
OS と違う価値を持ち続けるには、保存して終わりにせず、保存から次の行動への復帰まで設計する必要がある。商品スクショから価格や在庫に戻し、レストランスクショから地図や予約に戻し、旅行スクショから旅程に戻す。友達との共有コレクションを意思決定につなぎ、嗜好の文脈を personal AI に渡す。スクショを後から探せるだけでは足りず、未完了の意図を次の行動へ戻せるかが分岐点になる。
同じ構造は別の領域でも見える。Quartr が IR 一次情報を供給層に変えた整理では、対象は公開企業の資料だ。あちらは公開資料、こちらは私的なスクショだが、どちらも「集めて構造化する作業」そのものを守りにしている。

6. 同名の poolday.ai は別会社
pool.day を調べると、必ずもう 1 つの会社にぶつかる。pool.day と poolday.ai は別の会社で、名前が似ているため検索結果や調達データベースで混ざりやすい。ここを整理しておかないと、数字を取り違える。
poolday.ai は、自律動画編集 AI の Creator-1 を作る会社だ。自然言語の指示から動画、画像、音声、テキストを解釈し、編集の計画と実行を進める。前身は Viraaal UGC で、2023 年創業、拠点は San Francisco。Crunchbase や PitchBook には $8.7M の調達記録があり、出資者には CASSIUS、Daphni、Dastore、Financière Saint James、Geek Ventures などが並ぶ。
一方、本記事の対象である pool.day(Random Access Memories Co.)のスクショアプリは、公開ベースでは調達額を確認できない。採用ページに「投資家の支援」という言及があるだけだ。創業者の Maxime Junique と Piet Terheyden は、これを side project と説明している。
つまり $8.7M は動画編集 AI の poolday.ai の数字で、スクショアプリの pool.day の数字ではない。pool.day を語るときにこの $8.7M を持ち出すと事実誤認になる。創業者が side project と説明している点とも食い違う。
参考: poolday.ai 公式(別会社・動画編集 AI) / Daphni portfolio: poolday-ai / 創業者 Piet Terheyden の個人サイト
7. プライバシー設計が価値と不安を分ける
意図と嗜好を読むという仮説は、裏返すと、それだけ深いデータを預かるということだ。pool.day が扱うデータは、軽い保存データの範囲には収まらない。
Privacy Policy を読むと、対象はスクショ、写真、動画、ファイルに加え、キャプション、メモ、コメント、リアクション、リンクまで含む。写真ライブラリへのアクセスを許可すると、ライブラリの内容を継続して使う場合がある、とも書かれている。そこから作られる派生データも幅広く、文字認識の結果、ベクトル表現、類似度スコア、クラスタ、ラベル、トピック、要約、ランキング用シグナルが並ぶ。さらに踏み込んで、興味、嗜好、習慣、意図の推定までが明記され、繰り返し写る人物、連絡先の可能性、関係性の文脈まで対象に入る。Terms 側でも、ユーザーが入れた内容と関連データをサービス改善やモデル改善に使う場合がある、と書かれている。設定と法令には従うというスタンスだ。
年齢表記にはズレがある。App Store の対象年齢は 4+ だが、Terms 上の利用条件は 18 歳以上だ。未成年のカメラロールや友人の情報を扱うとき、ここが論点になりやすい。
pool.day の価値は、ユーザーが私的なデータを預けて初めて出る。だからこそ、説明、削除、共有範囲、学習からの除外を操作する UI が弱いと、価値より不安が先に立つ。同じデータの深さが、設計しだいで強みにも弱みにもなる。
参考: pool.day Privacy Policy / pool.day Terms / pool.day Legal Notice
まとめ:pool.day を 7 点で整理する
- 入口はスクショ:新しい保存習慣を作らず、既存の iPhone 操作をそのまま使う
- 表の価値は整理:コレクション、自動カテゴリ、元リンク復元、共有がユーザー向けの入口
- 裏の仮説は検索前のシグナル:検索・購買・予約の前にある私的な意図を扱う
- 嗜好はアプリをまたいで貯まる:Instagram や TikTok の外へ出たスクショがカメラロールに集まる
- OS リスクが大きい:Apple Photos / Google Photos が近い機能を持つと検索だけでは差が出にくい
- poolday.ai とは別会社:$8.7M 調達は動画編集 AI 側の数字で、pool.day の調達は確認不可
- プライバシーが価値を決める:文字認識、ベクトル表現、関係性の文脈まで扱うため、説明と削除の設計が要る
pool.day は表向きスクショ整理アプリとして始まっている。ただ公式 Research が描く市場はそれより広く、検索前の意図と嗜好を取りに行く消費者向け AI の入力層、という位置取りだ。プロダクトはまだ段階開放の途中で、語りと成熟度のギャップは大きい。
参考リンク
- pool.day 公式サイト
- pool.day の App Store ページ
- pool.day Privacy Policy
- pool.day Terms
- pool.day Legal Notice
- pool.day Research: カメラロール論
- pool.day Research: データの賭け
- pool.day Research: 嗜好論
- pool.day Research: 検索離れと盲点
- 創業者 Piet Terheyden の個人サイト
- poolday.ai 公式(別会社・動画編集 AI)
- Daphni portfolio: poolday-ai
- mymind
- Fabric ScreenshotAI
- Cosmos
- Quartr の IR データ供給層
この記事は、調査・記事制作に特化したAIエージェントと、人の編集で作っています
調査、構成、執筆、更新管理の一部にAIエージェントを取り入れています。 事業や組織へのAI導入を、実務に合わせて検討したい場合はご相談ください。
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