Ando:Slack に AI を足すのではなく、エージェント常駐前提で作り直す仕事用メッセージング
2026-06-04
仕事の依頼や相談、進捗の報告は、いまほとんどが Slack や Microsoft Teams のようなチャットに流れている。そこに AI を入れる動きが各社で進んでいるが、たいていは既存のチャットにボットを後付けする形だ。人間がメンションして初めて、エージェントが返事をする。あくまで主役は人間で、AI は呼ばれたら答える脇役のままだ。
その前提をひっくり返そうとしている会社がある。Ando は、人間と AI エージェントが最初から同じチャンネルで一緒に働くことを前提に、仕事用メッセージングをゼロから作り直すスタートアップだ。仕事用メッセージングとは、依頼も意思決定も進捗もすべて流れる、Slack のような会話の場を指す。
公式サイトの一文がそのまま立ち位置を表している。「Slack に AI を後付けしたものではない。エージェントが同僚として人間と働けるよう、メッセージングをゼロから作り直した」。動き方はこうだ。プロジェクトのチャンネルに人間が目的と制約を書くと、エージェントが計画、調査結果、未解決の質問をメッセージとして返す。外部ツールの操作は、承認を挟んでから実行する。
2026 年 5 月 25 日時点で、表に出ている情報は多くない。公式 URL は ando.so、本社は San Francisco、創業は 2025 年で、まだアクセス申請とウェイトリストの段階にある。それでも公式サイトと公開チャンネル画面、そして Ashby に並ぶ 7 つの採用票を読むと、何を作ろうとしているかははっきり見えてくる。以下では、その設計思想と Slack 置き換えの筋を順に追っていく。

参考: Ando 公式サイト / Sara Du の Ando 紹介
1. 中心にいるのが人間からエージェントへ移る
先に Ando の基本情報をまとめておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業 | 2025 年・San Francisco(創業者 Sara Du) |
| 公式 URL | ando.so |
| 現状 | アクセス申請・ウェイトリスト段階(2026 年 5 月 25 日時点) |
| 投資家 | Index Ventures |
| 採用 | 7 職種(開発 3・デザイン 2・全社業務 2)、San Francisco フルタイム出社 |
| 創業者の前職 | Alloy Automation 共同創業(a16z・Bain Capital・YC から $27M 調達) |
既存の仕事用チャットは、人間同士の連絡を中心に設計されてきた。だからボットやエージェントは、メンションされたときだけ応答する追加機能に収まりやすい。Ando はこの前提を反転させ、エージェントをチャンネルの参加者として常駐させ、長期の作業を進める形に組み直す。
主役がエージェントに移ると、チャンネルは会話ログだけでは足りなくなる。作業状態、決定ログ、その根拠、ツール呼び出しの履歴、承認のやりとりまで、同じ画面に並べる必要が出てくる。メッセージそのものの意味も変わり、人間の発言だけでなく、エージェントが何を観測し、どう計画し、実行して、失敗し、再試行したかを記録する単位になる。
Sara Du は自身のサイトで Ando を「人間とエージェント双方にとってよりよい Slack」と表現し、10 年以上取り組むつもりだと書いている。エージェントを賢い機能としてではなく、仕事場の共同参加者として扱うということだ。Slack との違いは見た目ではなく、メッセージという 1 単位が何を表すかという設計に出る。
参考: Ando 公式サイト / Sara Du の Ando 紹介
2. Sara Du は連携基盤からメッセージングへ来た
Ando が何を作ろうとしているかは、創業者 Sara Du の経歴を見ると腑に落ちる。彼女のキャリアの中心は、チャットアプリではなく、業務アプリ同士をつなぐ連携にあったからだ。
Sara は 2019 年に Alloy Automation を共同創業した。Alloy は、EC や業務アプリの間でデータを動かし、処理を自動化する連携基盤で、Amazon、Best Buy、Typeform などが利用企業に並ぶ。ノーコードの自動化から始まり、ソフトウェア会社が自社プロダクトに連携機能を埋め込む基盤や、複数サービスを同じ形で扱う統合 API へと広げてきた。a16z や Bain Capital、Y Combinator などから $27M を調達した会社でもある。
この出自は Ando とまっすぐつながる。エージェントが実際に仕事を進めるには、会話に答えるだけでは足りず、CRM、チケット、カレンダー、ドキュメント、コード管理、請求、社内データに触れる必要があるからだ。Ando は、チャット出身の創業者が AI を足したのではなく、連携基盤を作ってきた人が、その次の操作画面としてメッセージングを選んだ、と読める。
参考: Sara Du のプロフィール / Sacra の Sara Du インタビュー / Luma: Fireside w/ Lidiane Jones & Sara Du
3. 公開チャンネル画面がそのまま導入体験になる
Ando の /channels/home は、よくあるランディングページではない。チャンネル画面そのもので会社紹介を見せる作りになっていて、いきなりプロダクトの世界観に入れる。左サイドバーには #home、#company、#careers、#blog が並び、下に LinkedIn と X への導線がある。
#home では、Sara と Ando が歓迎文とウェイトリストフォームを投稿する形をとる。フォームは Name、Email、LinkedIn、流入元を聞く。メールだけ集める方式と違い LinkedIn と流入元まで尋ねるので、初期の参加者を人手で選んでいる可能性が高い。誰でも入れるのではなく、入口で絞っているということだ。
#company では、Ando という名前の由来を説明している。日本語の「安」と「堂」、建築家 Tadao Ando、ブルータリズム、ガラス、光。これは見た目の趣味の話にとどまらない。Slack の高密度な職場感とは違う、静かに集中できる仕事画面を作るという意図表明として読める。

参考: Ando #home チャンネル / Ando #company チャンネル
4. 採用票 7 職種にメッセージ基盤の中身が出る
プロダクトの中身は伏せられていても、採用票には何を作る人を集めているかが出る。Ando の採用ページには、2026 年 5 月 25 日時点で 7 職種が並ぶ。全て San Francisco / フルタイム / 出社で、役割は開発 3、デザイン 2、全社業務 2 に分かれる。
| 領域 | 職種 | 読み |
|---|---|---|
| 開発 | Product Engineer / Product Engineer, Memory / Design Engineer | 基盤、メモリー、相互作用 |
| デザイン | Brand Designer / Product Designer | 静かな世界観と中核 UI |
| 全社業務 | Business Operations / Executive Assistant | 採用、イベント、創業者支援 |
Product Engineer は中核のメッセージ基盤を作る役割で、検索、評価、エージェント開発基盤、ツール呼び出しの評価が職務に並ぶ。Product Engineer, Memory はメッセージへのタグ付けとメモリーシステムを担い、検索、評価とベンチマーク、事後学習の研究、基盤モデル提供元との連携まで含む。Design Engineer は複数人と複数エージェントの相互作用を扱い、プロンプトと UI の接続が明記されている。
この採用構成が示すのは、Ando の中身がチャットアプリにとどまらないことだ。メッセージ基盤、メモリー、評価、エージェント開発基盤、画面設計の研究が一体で組まれている。AI を業務に入れるときは、ツールにつなぐだけでは足りず、何を文脈として渡すかの設計で出来が決まる。この点はAIエージェントに何を読ませるべきかという記事で詳しく扱った。

参考: Ando Jobs / Product Engineer / Product Engineer, Memory
5. メモリーを後付けではなく基本部品として組む
採用票で繰り返し出てくるメモリーは、エージェント前提のメッセージングの肝にあたる。難しいのは回答を作ること自体より、文脈の渡し方だからだ。正しい文脈を、正しい権限で、正しい粒度で渡せないと、エージェントは的外れな答えを返す。Ando の Memory 採用票は、これをメッセージング側から扱い、メッセージへのタグ付け、メモリーシステム、検索、評価を同じ職務にまとめている。
想定されるメモリーは、5 層に分けると見やすい。
| 層 | 扱うもの |
|---|---|
| 会話のメモリー | チャンネルやスレッドの文脈、決定、未完了事項 |
| 対象のメモリー | 人、プロジェクト、顧客、ファイル、ツール |
| エージェントのメモリー | 過去に試したこと、失敗、利用者の好み |
| 検索 | キーワード、意味検索、権限を考慮した検索 |
| 評価 | 文脈の使い方、ツール呼び出し、引き継ぎの妥当性 |
Slack や Teams でも、会話ログ自体は会社の記録になる。Ando との違いは、メモリーを製品の基本部品として最初から組み込む点にある。勝負を分けるのは見栄えのいい検索画面ではなく、エージェントがチャンネルで作業するときに何を覚え、何を忘れ、どこで止めるかという設計のほうだ。

参考: Product Engineer, Memory / Slack AI の概要
6. 競合はすでにエージェントを仕事画面に入れている
メモリーや責任境界を作り込んでも、競合がいないわけではない。Ando の相手は AI スタートアップだけでなく、既存の業務プラットフォームでもある。各社がすでにエージェントを同じ場所へ入れ始めているからだ。
Slack は、エージェントをチャンネル、DM、スレッドで使える同僚として説明し、開発者向けドキュメントでは「ツール利用と文脈保持ができる自律的アプリ」と定義している。Microsoft Teams の Channel Agent は、チャンネルごとに作るエージェントで、状況報告、会議調整、タスク管理、質問応答を担う。Notion Custom Agents は、予定やきっかけに応じて繰り返し業務を動かし、Slack、Mail、Calendar、外部接続とつなぎ、権限と監査ログを持つ。
つまり市場の方向は揃っていて、エージェントは別タブのチャットボットから、仕事が流れる場所そのものへ移ってきた。だから Ando にとって、ただ「エージェントがある」だけでは差にならない。勝負どころは、既存画面の拡張では届きにくい責任境界とメモリー設計に絞られる。人間と AI が同じ場所で働く基盤という意味では、Liveblocks の共同編集インフラも別の角度から同じ課題を解いている。
参考: Slack AI の概要 / Microsoft Teams Channel Agent の FAQ / Notion Agents
7. Slack 置き換えは最初ではないが、筋はある
では Ando は最初から Slack を置き換えにいくのか。そこからいきなり入るのは難しい。仕事用メッセージングは移行コストが高く、通知も検索も権限も外部共有も全部絡んでくるからだ。
小さく始めるなら、プロジェクト単位のエージェント部屋が自然な入り口になる。プロジェクトや顧客、課題ごとに部屋を作り、人間が目的と制約と根拠を置くと、エージェントが計画、タスク、根拠、未解決の質問をメッセージとして返す。ツール呼び出しは承認付きにし、メモリーは部屋単位で閉じ、週次報告や引き継ぎメモ、リスク一覧を自動で作る。この形なら Slack の置き換えではなく、Slack、Linear、GitHub、Notion の横に置く指揮画面になる。どんな業務を任せられるかは、AIエージェントに任せられる日常業務 12 パターンで具体的に整理した。
それでも中期で見れば、置き換えの筋は消えない。エージェントが本当に仕事を進めるようになると、会話の場所がそのまま実行の場所になるからだ。
Slack は、人間の会話を束ねる画面としてはよくできている。ただ長く動くエージェントには、別の部品が要る。作業計画、途中状態、承認、失敗時の戻し方、メモリーの更新、実行結果の評価だ。これらを Slack に少しずつ足すことはできるし、実際 Slack はその方向へ進み、会話データを会社の長期記録として説明し始めている。
それでも置き換えの圧力が生まれるのは、画面の主語が変わるからだ。人間が会話してたまにボットを呼ぶ画面と、エージェントが常駐して作業し人間が確認する画面とでは、最適な形が違う。エージェントの仕事量が増えるほど、チャットは連絡の場所から実行を管理する場所へ寄っていく。そのときに、メモリー、承認、評価を最初から持つ画面が有利になる。
参考: Ando 公式サイト / Product Engineer / Slack AI Agents / Notion 3.3: Custom Agents
8. 勝負は日常業務の品質で決まる
Ando の成否は、デモの派手さではなく、毎日何時間も使う仕事画面の品質で決まる。問われるのは次の 5 点だ。
- 移行コスト:Slack や Teams の既存ネットワーク、履歴、連携は重い
- 責任境界:エージェントが実行した操作の責任者と停止点が要る
- メモリーとプライバシー:チャンネルメモリーは会社の非構造データそのもの
- 観測性:長時間動くエージェントの途中状態、再試行、費用、副作用を追える必要がある
- 日常利用の摩擦:通知、検索、待ち時間、モバイル体験の小さな差が継続率に出る
この 5 点を解けるなら、Ando はチャットアプリの枠を超える。人間とエージェントの仕事を制御する画面として、長く残る可能性が出てくる。
参考: Ando Jobs / Microsoft Teams Channel Agent の FAQ
まとめ:Ando を 7 点で整理する
- メッセージングから作り直す:人間とエージェントが同じチャンネルで働く前提を置く
- Sara Du の過去とつながる:Alloy の連携基盤、業務自動化、統合 API の先に Ando がある
- 公開画面が製品仮説になる:ランディングページではなくチャンネル画面でウェイトリスト、会社紹介、採用を見せる
- 採用票 7 職種に基盤が出る:メッセージ基盤、検索、評価、メモリー、ツール呼び出しの評価が並ぶ
- メモリーは基本部品になる:タグ付け、検索、評価がチャンネル体験と接続する
- 競合はすでに動いている:Slack、Teams、Notion はエージェントを仕事画面に入れている
- Slack 置き換えは中期テーマ:短期はエージェント部屋、長期は会話と実行の既定面を狙う
Ando を「AI 機能の付いたチャットアプリ」として見ると、輪郭がぼやける。人間とエージェントが一緒に働くためのメッセージ層として見ると、採用票と公開画面の意味がひとつにつながってくる。
似た関心があれば、X かメールで連絡ください。
参考リンク
- Ando 公式サイト
- Ando #home チャンネル
- Ando #company チャンネル
- Ando Jobs
- Ando Product Engineer
- Ando Product Engineer, Memory
- Ando Design Engineer
- Index Ventures: Ando
- Sara Du の Ando 紹介
- Sara Du のプロフィール
- TechCrunch: Sara Du
- Sacra の Sara Du インタビュー
- Luma: Fireside w/ Lidiane Jones & Sara Du
- Slack AI の概要
- Slack AI Agents
- Microsoft Teams Channel Agent の FAQ
- Notion Agents
- Notion 3.3: Custom Agents
- AIエージェントに何を読ませるべきか
- AIエージェントに任せられる日常業務12パターン
- Liveblocks:AIと人間が同じroomで働く基盤
この記事は、調査・記事制作に特化したAIエージェントと、人の編集で作っています
調査、構成、執筆、更新管理の一部にAIエージェントを取り入れています。 事業や組織へのAI導入を、実務に合わせて検討したい場合はご相談ください。
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